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八坂神社に向かって四条通左(北側)を歩くとくずきりが有名な鍵善義房がある。
そのごく近くに木の壁に囲まれ、わずかなガラス窓からレモンが覗く小さな店を見た記憶は無いであろうか。

多くの観光客の方は、いぶかしそうに眺めて素通りするか、そんな店あったかなとの記憶しか無いと思う。
営業中の看板の脇では「太陽のしづく 新鮮純果汁とコーヒーの心をあなたの生命にどうぞ」とささやかに
この店の存在を主張するプレートが並ぶ。右手のガラス戸から中を覗けば、舞妓さんの団扇が壁に整然と。

この喫茶店の名はまる捨。長きに渡り祇園の人々に愛され、
正真正銘のフレッシュジュースとコーヒー、軽食を供してくれる喫茶店。

白髪をきりりと後ろでまとめたほっそりとした美しい店主が誰でも温かく迎えてくれる。
訪れるのは近所の常連さん。店主の変わりに「奥へどうぞ、どうぞ」と席を譲ってくれたりする。
10人も座れないほどのカウンターテーブルに、壁際にテーブル。まるで船室のような、
誰かのお宅にお邪魔したかのようなこの空間の狭さが却って心地良い。

シェイカーを振る店主の素敵な姿が見たくて今日もレモンジュースを頼む。
連れはミックスジュース。いずれも450円。

最近の話題は「梅雨はいつ明けるんやろか」。常連さんとの話を進めながら、
店主は手際よくジュースを作っていく。取り出したレモンを2つに切り、搾り器で果汁を出す。
昔は皆、この器を使っていた。懐かしく見ているとシェイカーに蜂蜜などを入れスタンバイ。
まるでバーテンのような格好良さでシャカシャカ振ると、昭和の香りのするグラスに注ぐ。
どうだ、この量の加減は。クラッシュアイスに輪切りのレモンをのせ、完璧なバランスで、
レモンジュースはトンと目の前に置かれるのだ。美しい。ひたすら美しい。
えげつない酸っぱさではなく、まろやかなこの酸味と爽やかさはこの技によるものなのだろうか。
夏の暑さが堪えた身体にしんと染み渡る。
一方ミックスジュースは甘くてほんわりとしたやさしい味だ。
小奇麗な小さなジューサーミキサーを取り出すと、手際よくバナナやりんごなどをポンポンと。
牛乳の他、蜂蜜やアイスクリームも魔法のように加えられる。
そして、ビールのようにほんわかと泡が上に浮かぶミックスジュース。とにかくほっとする。
いつまでもこの味を楽しみたいと願う一人としてお願いしたいのだが、 場所柄禁煙ではない。
十分な数の灰皿も用意されているくらいだ。しかしながら、このご時勢、この狭い空間で
煙草を吸う必要があるのかと問いたい。決して換気は良くないのは分かるはずだ。
そして店主はコンコンと咳をされている。世の中の喫煙派ダンディ&淑女の皆さん、ほんの一服の時間だ。
ご一考いただければ幸いである。
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